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第41回八重山古典音楽コンクールでした。

昨日10月7日は第41回目の八重山古典音楽コンクールが開催されました。八重山古典は三線の腕もさることながら、その歌い方が難しいのです。八重山地方の方言での発音、発声、舌の使い方や口の開き方等で歌が変わってきます。

『歌三線』と言われるように、歌が大切なのです。そんな発音の難しい八重山古典音楽コンクールに最近は内地の方の受験が増えているようです。内地の方にとっては八重山古典の歌はハードルが高いでしょうね。

 

そんな歌三線のコンクールの新人賞に当工房でゆし木の三線をオーダーされたお客様が二人挑戦いたしました。

東京からT様

2年前の出来事

T様が当工房を初めて訪れたのは二年前の年末でした。

なんでも、八重山古典音楽を始めたとの事で、八重山古典をやるからには、絶対三線は八重山黒檀!と心に誓って本場石垣島へ三線を買いに来た!と言っていました。

ですが、石垣島のどの三線店に行っても八重山黒檀の三線がないっ!

という現実に直面し、困っていたところ、(いや本当に八重山黒檀の三線はそのぐらい品がなく、手に入らないのです。)八重山三線工房の八重山黒檀を使った三線棹の紹介を載せていたFacebookを発見したという事で、黒木の三線を見せてほしいと電話がありました。

(HPもありますが、どうやら検索に引っかからなかったとう残念なお話もいただきましたが・・・(^^;)

年末で用事があり早々と工房を閉めてしまっていたので、急遽八重山黒檀の三線棹を用意して工房でT様をお迎えしました。幾つかご覧になった中で、最終的に店主が当時一番気に入っていた八重山黒檀の三線を、妥協したくない、といった強い思いと共に購入決定されました。

ゆし木のオーダーのきっかけ

その後その八重山黒檀の三線を大切にされていたようですが、半年後、また石垣島にお越しの際当工房にお立ち寄りいただき、なんと違う三線を作って欲しいとのお話を頂きました。聞くところによると、あの黒木の三線は教室へは持って行けないとの事。(何故か?!それには色々複雑な事情があるようで(笑))なので、気軽に持って行ける三線が欲しいとおっしゃって。

それでしたら、今度は黒ゆし木の出番です。

という事で、折角足を運んでくださったので、黒ゆし木原木を直接選んで頂きました。

 

これが、その選んだ原木です。とりわけ黒いゆし木の原木です。

型に関しては何がいいかわからない、と。その時丁度江戸与那型の三線があったので、弾いて頂いたら、その音に驚いていました。

江戸与那型はその糸蔵の長さから独特の優しい音色を奏でます。そして材料は、これまた優しい響きのするゆし木です。

前回購入していただいた八重山黒檀の三線の音とは全く異なります。どうせなら違ったタイプの三線が欲しいという事で江戸与那型にしようと決めつつ、そこに製作途中の平仲知念大工型があり、それも形がカッコいいと判断しかねる結果となり・・・。

結局この原木からは2丁とれそうだった事、そして正月にまた石垣島に来るとの事から、平仲知念と江戸与那両方作って、出来上がった物を見て、弾いて判断する、という話でやっと終結をみました。(^^)

早速製作作業に取り掛かります。予定通り2丁とれました。

寸法出しをして下準備。

こうしてみると芯(実)のマーブル模様がきれいで濃茶なのがとてもよくわかります。

糸蔵をあけます。江戸与那型の特徴長い糸蔵。

2丁出来上がりました。この二つ、特に天の部分が全く異なります。

平仲知念大工型は天の稜線が特徴です。この型は男性に好まれます。この型のみ何丁もオーダーをされるお得意様もいるくらいです。ですが、野丸、棹の裏、楕円が少し扁平しているので

女性に握りやすいかなぁ、とも思います。

 

そして、今年、年始に石垣島にお越しのT様、両方を何度も何度も弾き比べ、石垣島滞在中、ずっと悩んで、悩んで・・・。

結局、どっちに決めたと思います?

 

平仲知念大工型に心を決められました。

それも平子と名付けて(^^)

 

その平子が嫁いで約10か月後の昨日、コンクールという晴れの舞台でT様の合格に力添え出来た事、本当に嬉しく思っています。おめでとうございます。

 

次回、優秀賞の時は是非今度は黒木の子もデビューさせてあげて欲しいものです。(*^-^*)

 

石垣在住のS様

いい三線を持つ意味

最初は『カラクイが折れてしまって』との一報でした。カラクイも質があります。三線の価格相応のカラクイはやはり正直折れやすいのです。なので3本とも交換をお勧めしました。一本だけ違うカラクイも変ですし。その時、当工房で作っている三線を見られ、コンクールもいつかは受けると話をされ、それだったら少しいい三線を持った方が早く上達するよ、と教えました。

何故か。まず発音が正しくなります。大量生産されているような価格の安いものはまず、チンダミ(調弦)がうまくできません。

いい三線はチンダミがしっかりきちんとできるため、正確な音を奏でます。三線が正しく響けば、声もおのずとその音に乗って、正しい発音となり、そしてその響く音色に引っ張られより声音が上がります。ホールに響きわたる声となるのです。

それに、コンクールでは音も影響してきます。量産品の三線で受けられるのは新人賞までと思っています。

S様もいつか、当工房で三線を作る、と心に決められたようでした。

 

 

 

ゆし木の三線への熱意

後日、また連絡がありました。またカラクイが折れてしまったとの事。ぶつけたと言っていました。そのカラクイ交換の際、お金をためてゆし木の三線を買おうと思っています。いや、絶対買います!と息巻いていました。

そしていよいよ7月、オーダーのお話を頂きました。

コンクールにぎりぎり間に合う、良かったです。

 

この方は石垣島の方なので、工房にあるゆし木を選んで2丁作り好きな方を選んでもらう事にしました。もちろん、製作途中も何度か工房にマイ三線をみに来られました。

 

とても控えめな方なのですが、三線の練習に関してはとても熱心のようで、毎日しっかり練習をしていると話をしていました。

自分の三線が目の前で出来ていくのは楽しいでしょうね。

なので、内地の方でオーダーされる方には極力工程を写真にとって送ったりしています。

ゆし木はオーダー用の原木なので、本当は原木も選んでもらいたいところですが、それが叶わない方には原木も写真を撮って送って確認してもらいます。

コンクール当日、会場で会ったS様、とりあえず全部歌えた~、とほっとしておりました。八重山古典のコンクールは、あまりにダメと判断されると演奏の最中でもブザーが鳴らされて強制終了となる事があるのです。

みんなそのブザーを恐れながら舞台にたつようです。

なので、最後まで歌えた!と笑顔が見られて本当によかったです。

 

合格、本当におめでとうございます!

この方のマイ三線が、ゆし木の三線が一緒の舞台に上がれて合格して。作る側としてこの上ない喜びです。

 

次も是非同じ舞台でゆし木の三線と共に頑張ってもらいたいものです。(*^-^*)

八重山黒檀三線商品、追加しました。

やっと商品追加です。

八重山黒檀真壁型です。

 

派手な模様に仕上がりましたが、とてもよく響く三線です。

 

興味のある方はネットショップからご覧ください(^^)


今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございまいました。

八重山(やいま)三線工房 新城 (*^-^*)